夢見る少女は名乗れない

ただのおたく・エビハラの日常とか漫画の感想とか

〈2〉オタク同士の婚活というものについて問題

 アニョハセヨ~。エビハラです。

 Amazonプライム終了作品が多すぎる件で世間の片隅はにぎわっているようですが、そんな片隅のさらなる隅にいる私は、ひとまず「宮」の公開が終了しないようで一安心。「コーヒープリンス1号店」でハンギョルにシンクロしながらウンチャ~~ン!と咽び泣いていた私、すっかりユン・ウネにハマりました。かわいいよね。でもコーヒープリンスの方が好きだったせいか、「宮」をなかなか見進められないのよね。なんでだろう?コーヒープリンスの方がイケメン度が高いからかな。男装のユン・ウネも美少年って感じでカッコいいし、テニミュ越前リョーマ役でデビューできそうな正統派感があった。

 

 さて、昨日書いた休日何してる?問題の話。この質問をされても唯一気取らずに返せる相手というものがいる。

 

 それは私と同じオタクという人種だ。

 

 実は私、先日初めて婚活アプリで出会った人に会ってきたんです。とある作品が好きで、その映画を観に行こうというお誘いで、メッセージで交わした会話も10割がその作品についてだったので安心して行ってきました。

 映画がものすごく面白かったから充実はしていたし、その後の食事も楽しかった。ほとんど作品の話ばかりしてたけど、オタクだから盛り上がる盛り上がる。ちょっと隣のカップルの目が気になったけど、まあこの人たちだって何か好きなものとなれば熱く語り明かしてしまうものでしょう。

 

 そんなわけで、まあ婚活という本来の趣旨からは完全に外れているわけなのだけど、私はそこそこの充実感を持ってその日を終えたわけです。

 でもその充実感も、長いこたぁ続かなかった。

 仕事関係で付き合いのあるA子店員(もちろんオタク。本命ジャンルは今のところユーリ!!!だそうです)にその話をしたところ、彼女が言ったのだ。

 

「え?でも相手のこと結局何も知らないんですよね?」

……そういえば……そうだな…………??

 

 そこで私が知ったのは確かコレとコレとコレの監督が同じだから頭ぶっ飛んでるとか、実はこれにはこうこうこういう伏線が…とか、そういう話だけだった気がするし、私は私でこの映画が実写も含めてサイコーだからとにかく観てほしいとかそういう話しかしなかった。

 そこでまたA子店員は続ける。

 

「オタク同士のオフ会って、基本的に趣味で繋がってるから趣味の話しかしないじゃないですか。別に友人関係ならそれでも全然築いていけるからいいんですけど~、婚活ってなると相手のこと全然知らないままに充実度が高まってくから錯覚するんですよね~。この人といると楽しいんじゃないか、って~」

「えっ。いやでもさ、実際話してると楽しいっていうのは重要だよね……?」

「だからぁ~、それも違うんですってぇ。話してると楽しいっていうのは共通言語の地盤が同じだから、安心して好きなジャンルの話できるでしょ~?それが楽しいだけで、その人本人と話すのが楽しいっていうと違うじゃないですか~」

「ま、まあそれはそうなんだけど……」

「だってその人本人の話に興味持てます?作品以外の話ですよ?」

「ああ………(顔覆)」

 

 そうなのだ。私たちはたまたまホニャララという作品で繋がっただけ。

 実際申し訳ないことに、彼本人に興味が沸いたかというと正直答えは否。っていうか、幾つか質問してみたけど、やっぱアニメとかの方が食いつきがいいんだよな。その割に質問してこないしさ~。なんだかさ~。別にいいんだけどさ~。私が空白恐怖症だからめいっぱい質問したけど、そうじゃなきゃどうしてたと思ってんだ!

 でもわかってる。私が一番根に持ってるのはそこじゃない。彼の好きな作品について色々と聞いた後で、ポロッとテニプリが好きで~と言った時のあの表情。

 

「あれ?こいつ腐女子かな?」

 

 っていう気配が滲んだあの微妙~~~~~な表情。

 あの瞬間に、「あ、私この人アカンかも」と思ってしまったんですよね。

 

 これ、女オタクの皆さまは一度は経験したことあると思うのだけど、特定のジャンルを好きだと言うと「え?腐女子?」って言われるのマジで何なんですかね?腐女子だけはどんどんネームバリューを広げているし、女オタクイコール腐女子みたいなようわからん等式が持たれる事はだんだん減ってきたように思うけれど。それでも、中学生から夢小説を嗜んでいる私としてはマジで解せない。

 

 あと私、軽く人生の半分以上をテニプリに捧げてきたから、相手がオタクだと思うとテニプリぐらい共通言語にしておけよ!!と傲慢になってしまう節がある。

 オタク同士の会話が楽しいのは、ある程度ネットなどで話題になっていればほとんどが共通言語になりえるところにも一因があると思う。例えば私は『けものフレンズ』は観ていないけど、「わーい!たーのしー」は知っている。けもフレを話題に出されればこのワードを引き出せる自信もある。

 

 で、『テニスの王子様』といえば十年以上前に始まり、今もなお『新テニスの王子様』が連載されている上に、アニメにゲームにライブにフェスにミュージカルにVRに遂にはアプリに、と今なお発展を続けるマンモスジャンルだ。ぶっちゃけ世の女性オタクは全員一度はテニプリを通るはずというのが私の持論で、テニミュ若手俳優の登竜門ならテニプリというジャンル自体が女オタクの登竜門だと思うのだ。そして最終的には許斐先生シンパになる。許斐先生がいよいよ許斐王国を作ると言い出したら、私は生まれ育った地を捨ててついていくでしょう。許斐キングダム、ここに建立――…!

 

 そんなマンモスジャンルだからこそ、「私テニプリが好きなんですよ~」って言ったらもう阿吽の呼吸で「スケスケだぜ!」とか言ってほしいんですよ……!!最初に跡部様が出てくるのどうなの?って思ったら「まだまだだね」でもいいし、「弟が世話になったね……」だっていいじゃない。テニプリには数々の名台詞があるから、自分の推しの台詞を言えばいいと思うよ。ワシの推しは108人いるけどな。

 ああ神様。そう思うのは傲慢でしょうか。テニプリが好きと言った時の彼の表情を、私は忘れられないのです。テニプリか。ああ……。そんな気配を滲ませた、あの表情を。

 

 そんなわけで、私は彼からの「今度の休日ヒマですか?」という質問に対し、返信できないまま既読スルーを決め込んでいる。行きたい場所?ジャンプショップかナンジャのJ-WORLDなら行きたいけど?ちなみに私が家で使っているマグカップは飲み終えると跡部様が「俺様の美技に酔いな」って言ってるやつなんだけど受け止めてもらえます?

 

 それ以来彼の返信を見た者はいなかったという。あゝ無念。

〈1〉なぜ人は休日の予定を知りたがるのか問題

 そろそろ危機感を覚えて、年明けにアカウントを取得した婚活アプリに、半年ぶりぐらいにログインした。


 今年新卒で入ってきた部署の女の子がやっているのを見て焦ったのが理由だが、それはその子がやっているから焦るというよりも、その子がいじられているのを見て焦ったのだ。

 

 たとえばの話、私は自分のデブネタを上手く扱うのが苦手だし、周りもモノホンのデブだと分かっているから全くいじってこない。でも、ちょっと痩せてる人が食べ終わったあとにぽっこりお腹が出ていたりすると、ここぞとばかりにいじったりする。それは、その子が本当はお腹が出ていないことを知っているからに他ならないし、違うからこそ安心して話題に出せるのだろう。人間、ひとが傷つくようなことは言ってはいけない

 

 だから私はぽっこりお腹をいじられたことも、「そろそろ焦んなよ~」「ほら登録しなって~」などともいじられないわけだけれど、そんな無言の圧力に乙女心を痛めている昨今です。いや、まあ正直言われても傷つくんだけど。できれば真綿くるんで一切傷つかないように割れ物包装ぐらいしてほしい。

 

 それはさておき、婚活アプリだ。

 

 

 久しぶりにログインしたのでどうしたもんかなと思ったのだけど、神は私を見捨てなかった!けっこういいねがある!とりあえず全部返しておく。あれ。このいいね半年前だな。まあいいか。メッセージ付きのものも、気になるもの(そして比較的最近のもの)には返事をしておく。

 

 で、まあここまではいいとして……。

 

 私、常々不思議に思っていたのだが。なぜ人は、だいたい一発目の質問を「休日とかって何してるんですか~?」から始めるんだろう?

 

 これは別に婚活アプリに限った事じゃなく、わりと初対面あるあるだと思うのだけど、マジで謎。

 

 えっ。だってそんなの聞きたいの?休日だよ?

 休んでるに決まってるんじゃ………ないですかね………???

 

 会社で夏休みとか連休に被せて休みを取った時にも「あれ、どっか行くの?」などと聞かれるけれど、これも謎。えっ……休みたいだけですけど……いや夏休み好きなタイミングで取っていいって言ってたじゃん……。

 

 別に、休んでるに決まってんだろ!!察しろよ!!!なんてことを言いたいわけじゃない。私はもうクーラーの効いた部屋でゴロゴロ休んでたいし、連休が決まれば漫画と本と食料を買いまくり部屋に籠城する方が落ち着く。旅行も嫌いじゃないけど、何度か一人旅してみて旅行は誰かと一緒のが楽しいなって結論に達したから、不意の休みに旅行しようって気にもならないんだよな~。一人で楽しめることをしたいと思ったらそりゃ部屋ゴロ寝のマンガ祭りになるよね、っていう…。

 

 で、じゃあ何が言いたいかっつーーと。

 この質問ってすごく強制力を感じるのよね。

 なんかこう、

 

 休日?あ~ね、まあ映画観たりとか~ライブ行ったりとか~あとアートとか好きだから~美術館とか~けっこう行っちゃう~あ~ミュシャ展最高だった~また行きた~い日本来ないかな~

 

 …みたいな……××年生きててそうやって過ごした休日どんぐらいあんの????っていう見栄を思わず張ってしまう強制力をさあ!?感じない!!?私はめちゃめちゃ感じるよ!!舞台なんて2.5次元のイケメン大勢出てるやつしかほとんど見たことないのに観劇も趣味に挙げるしその時に具体例を聞かれたら「佐々木蔵之介のRENTとか~あと高畑充希ちゃんとかが出てたわたしは真悟観たけどめっちゃよかったよ~?><」と答えるという一般向けの模範回答だって用意してんだよ!!!いやでもRENTはそんなに一般向けじゃないかな?ゲイの話だったし…。

 

 私は世にいうオタクという存在なのだけれど、幸いながら今までオタクだからといって排除されたこともないし、そんなに隠して生きてるつもりはない。から、息苦しさは感じない。だから、こういう時にものすごく息苦しさを感じるのだ。休日の予定は?とか聞かれて今流行りの映画観ようかな~って(照)なんて答えた挙句土日を寝倒して、翌週感想を聞かれた時のためにグーグルで感想をググったり。ふんふん。なるほど菅田くんがサイコーだったとな。メモメモ。みたいな。

 

 なんだろう。確かに私は見栄っ張りだから不自然ではないのだけど、この質問はどんな人に投げ掛けても、つい見栄を張らせる強制力みたいなものがある気がするんだよな。もちろん会話のきっかけにしたいのもわかるんだけど、これで見栄を張らずに「家でゴロゴロしてます」って答えたらいったいどうするつもりなんだろう?会話終わっちゃうんじゃないか?

 

「休日は何してるんですか?」

「家でゴロゴロしてます」

「へえ!いいですね♪うつ伏せ派ですか?仰向け派ですか?」

「基本は仰向け派なんですけど~、前に道重さゆみが翌日に仕事がない日は(顔むくんでも大丈夫だから)うつ伏せ寝してるっていうのインタビューで見てから、私もうつ伏せ寝にしてます~」

「うわ~休日の贅沢~!いいな~!僕はやっぱり仰向け派ですね」

「仰向けもいいですよね~思う存分ぼうっとできるというか」

「そうなんですよ~!気が付いたら夕方とかザラですもんね~!」

「仰向けって漫画や小説読む時に手が疲れるのだけがネックですよねえ」

「でもほら、最近は便利なグッズも出てますからね」

「怠惰に優しい世の中になって素晴らしいですねえ」

 

 意外と話が続いてしまった。自分を偽らなくてもどうにかなるのかもしれない。